クーガーがスタンフォード大学でバーチャルヒューマンエージェントの講義を実施
2018年10月11日にクーガー株式会社の石井、石黒の二人がスタンフォード大学のUSアジアテクノロジーマネージメントセンターのリチャード教授にお招き頂き現在開発を進めているLudensプロジェクトの現在の開発状況を発表させていただく機会を頂きました。今回はその発表内容のレポートをお送りいたします。
- 世界の名門スタンフォード大学にクーガーが招待
- 最先端研究を行うUSアジアテクノロジーマネージメントセンターとは
- スタンフォード大学におけるクーガーの講義内容 | バーチャルヒューマンエージェント
- [スタンフォード①]クーガー CEO 石井敦からの発表内容
- [スタンフォード②]クーガー Chief Blockchain Architect 石黒一明からの発表内容
- まとめ
1.世界の名門スタンフォード大学にクーガーが招待
スタンフォード大学(www.stanford.edu)はサンフランシスコとサンノゼの間あたりに位置する歴史ある大学で、学術的にも地理的にもシリコンバレーの中心と言っても過言ではございません。「Die Luft der Freiheit weht(独:自由の風が吹く)」という校訓の雰囲気が今も感じられる、広くて自由な気持ちになる、明るくゆったりしたキャンパスです。
英タイムズ紙の2018年世界大学の難易度ランキング(Times Higher Education World University Rankings)によると、1位がオックスフォード大学、2位がケンブリッジ大学、3位がスタンフォード大学(カリフォルニア工科大学と同率3位)、合格率が4.7%(2017年現在)と、アメリカで最も入学するのが難しい大学と言われています。
ゆったりした学内にあるカフェや庭など、色々な場所で勉強をしている学生が見られます。
著名な卒業生は枚挙にいとまがありません。
宇宙飛行士をなんと18人も輩出しており、IT関係では、インターネットの父と言われるヴィントン・サーフ、Googleの創始者セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、Yahooの創始者デビッド・ファイロとジェイー・ヤン、人工知能研究の第一人者で、プログラミング言語のLISPの創案者のジョン・マッカーシー、公開暗号鍵の創始者マーティン・ヘルマンなどが同校の出身者です。
スタンフォード大学から生み出された研究やプロジェクトも数え切れないほどあります。
ARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)、世界で初めて運用されたパケット通信コンピュータネットワークのノードの1つは、スタンフォード人工知能研究所(SAIL)(https://www.sri.com/)に設置されました。ラジオのFM音源の合成方法もスタンフォードで開発されました。現在もコンピュータ関連企業の創業者を多く輩出しています。アメリカ、いや世界の工業界を牽引してきた名門大学の一つと言っても過言ではないでしょう。
2.最先端研究を行うUSアジアテクノロジーマネージメントセンターとは
USアジアテクノロジーマネージメントセンター(US-Asia Technology Management Center, US-ATM)は、1992年にスタンフォード大学に設立された日米技術を管理する教育研究センターです。公開講義シリーズ・セミナーを開催、研究プロジェクトの支援、大学の新コースの設立、webプロジェクトなどの活動を行なっています。
同研究所のプログラムは、国際戦略的な技術管理を実践的に考え、最先端の研究を分析しています。今回、この研究センターのRichard Dasher教授のAIセミナーシリーズの中で、Cougerのルーデンスについてスタンフォードの学生に向けて話をしてほしいとお招きいただき、行って参りました。
スタンフォード大学におけるクーガーの講義内容 | バーチャルヒューマンエージェント
今回の発表には、CougerからCEOの石井とChief Blockchain Architectの石黒の2名がスピーカーとして招かれました。スタンフォード大学のウェブサイトにスライドやデモのビデオも掲載されていますので、こちらも参考にしてください。
簡単に発表内容をご紹介して参ります。
[スタンフォード登壇①]クーガー CEO 石井敦
Cougerが開発を進めているAI x AR x Blockchainと社会を結びつける新しいインターフェースのプロジェクト、「Ludens(ルーデンス)」について概要の説明から始まりました。
来たるloT時代には、自律テクノロジーにより我々の身の周りにある自動車、ドローン、飛行機、家電、ロボットなどすべてがつながって行くと予想されます。自律テクノロジーを実現するインターフェイスの一ひとつとしてバーチャルヒューマンエージェント(Virtual Human Agent, VHA)の開発を進めています。
バーチャルヒューマンエージェントは視覚や聴覚、感情、知性などの感覚を持つ仮装キャラクターです。現実世界のイメージや状況に反応し、会話したり、家電を操作したり、まるで人間のように思考し、コミュニケーションすることができます。
石井は、開発しているレイチェルというバーチャルヒューマンエージェントを例に挙げ、人に似せたインターフェイスにすることで、使用する人間とバーチャルヒューマンエージェントとのやりとりがスムーズになり、今後様々な用途に合わせてバーチャルヒューマンエージェントが広がっていく可能性について話をしました。
「特に今、注目されているのは車内空間への展開です。バーチャルヒューマンエージェントがあなたの車に同乗しているとしましょう。車に乗っている人々の会話から、飲み物を購入する提案や、車内でかける音楽のセレクトと提案など、まるでよく気がつく友達のように車内空間やドライブを快適にしてくれます。
バーチャルヒューマンエージェントは、画像・音声・過去の履歴と実行などから総合的に判断し、人々の行動や暮らしを快適にする提案を行い、実行します。
AlexaやSiriに対して「これをしてほしい」「これを行なって」と言うような一方通行の命令ではなく、協調性を持った日本らしい機能と言えるでしょう。」
バーチャルヒューマンエージェントの開発は1社でできる規模ではないので、現在開発中のSDK(Software Development Kit)を使って、デベロッパーやクリエイターがワールドワイドにルーデンスに参加・共有できるシステムを作ろうとしているプロジェクトを進めており、色々な人が新しいバーチャルヒューマンエージェントを作ったり、使ったりできるようになることを目指しています。
[スタンフォード登壇②]クーガー Chief Blockchain Architect 石黒一明
Chief Blockchain Architectの石黒からは、ルーデンスやバーチャルヒューマンエージェントについて技術的な説明を行いました。特に、AIの信頼性について、またこのようなプロジェクトになぜブロックチェーンが必要なのかということに関して説明いたしました。
AIの信頼性について、今販売されているAlexaなどの仕組みが中央集権的にデータを集めており、今後は非中央主権的に、ブロックチェーンを使ってデータを管理して行くことが重要となってくるだろうという点。
また現在Cougerが開発したGeneFlowというブロジェクトを紹介し、AIの履歴をブロックチェーン技術を使用して記録していく流れを構築することが重要となっていく点について、学生たちに説明しました。
今後の展開については、世界中のコミュニティの中で共同で作っていくことが重要であり、すでにハッカソンやミートアップなどを世界各地で開催しております。今後はルーデンスのマーケットプレイスの中で販売できる仕組みに関しての構想を発表いたしました。
2人の話は学生たちにたいへん興味を持って迎えられ、この後、オーガナイザーであるリチャード教授を交えて3人でトークセッションを行った後、学生たちとの熱いQ&Aを行いました。その中からいくつかのやりとりを取り上げてみましょう。
[スタンフォード登壇③]Q&A
教授 :まずは最初になぜクーガーを始めたのか。
石井 : クーガーは最初ゲーム開発の会社としてスタートしました。ゲーム開発をしながらAIとロボティクスの仕事を始めました。その中でAIにはデータがとても重要であることに気づきました。そこからブロックチェーンを始めて、AIを保護するためにブロックチェーンを使っていかねばならないと思いました。
教授 : 会社を始めてどのくらいで、何人働いているのですか?
石井 : ゲームを作っていた頃から10年です。今は18人のスタッフがいます。東京とシンガポールに事業体制がありますが、今後のグローバルビジネスのためにベルリンとアメリカにも拠点を作る予定もあります。
教授 : 大阪大学の有名な石黒浩教授とは違うデバイスですが、彼のロボットをどう思いますか(笑)?
石黒 : 彼のロボットには限りがあります。コストが高く、アップデートには時間がかかるケースも多くあります。私は、バーチャルヒューマンエージェントがマーケットプレイズで流通するようになれば、様々な人がトークンを支払って、その人にあった一番いいバーチャルヒューマンを作れるようになると思います(笑)。
石井 : いつか他社がブレードランナーのようなバーチャルヒューマンエージェントのハードウェアを作って、私たちが応用できればいいですね。
生徒 : バーチャルヒューマンエージェントのビジュアルやキャラクターを人に似せる機能がありますか?
石黒 : 人間に似せる機能は、テンプレートがあり、あなたがカスタマイズできるようになります。例えば私のヒューマンエージェントは蛇を怖がる、といったカスタマイズを提供できるようになります。
生徒 : なぜアレクサのような無機質な形でなく人型にするのですか?
石井 : あなたが好きなゲームのキャラクターや友達に似せることで、よりカジュアルに接することができると思うからです。
生徒 : 技術的な価値が高いアプリケーションを挙げてください。
石井 : 次のユースケースがあると思います。
1つ目は受付。店やレストランで、特に子供に対してバーチャルヒューマンエージェントはポテンシャルが高いと思います。
2つ目は車で。車はあなたの部屋のように変わります。ずっとコミュニケーションできる相手がいる機能です。
生徒 : バーチャルヒューマンエージェントとチャットロボットの違いは?
石黒 : 確かにチャットロボットに似ています。似た技術を使っています。ポイントは、バーチャルヒューマンエージェントは会話を増やしたり、バッググランドを感じたり、ビジョンのために表情を読んだりできるところにあります。
例えばチャットロボットに「私は怒っている」とタイピングすると、チャットロボットは「どうして怒っているのかわかりません」と答えるでしょう。
バーチャルヒューマンエージェントは、私が怒っていることを表情や動きから察知します。チャットロボットに「私は怒っていない」とタイプするが、顔は怒っている(ことがチャットロボットにはわからない)。ここに違いがあります。
生徒 : 例えば車を自動運転するようなアプリケーションもありますが、バーチャルヒューマンエージェントはそのようなアプリケーションも想定して開発をされていたりしますでしょうか?
石井 : はじめのステップは、まずバーチャルに親しんでいないユースケースについて検討することだと思います。車のケースでは、バーチャルヒューマンエージェントを自動運転やナビゲーションとは異なるやり方で使います。
例えばバスガイドのように、エンターテイメントや娯楽の側面にまず焦点を当て、その後、機能を訓練し加えていきます。
石黒 : 私たちの初めてのユースケースは制限がありました。石井が挙げたように、将来5G(第5世代移動通信システム)ネットワークが敷かれれば沢山のデータセットをダウンロードすることもできるようになると思います。
将来には、あなたが車にいる時、あなたの前や横にまるで本当に誰かがいるように、バーチャルヒューマンエージェントと話ができるようになるでしょう。その日は近いと思います。
まとめ
スタンフォード大学の招待で今回サンフランシスコでバーチャルヒューマンエージェントの応用例を発表させていただく機会をいただきました。たくさんのフィードバックを通じて、今後の開発やユースケースの開拓に有意義な時間となりました。
クーガーでは、国内だけでなくグローバル領域での技術実装を進めていく仲間を募集しています!