今回はLudens(ルーデンス)のバーチャルヒューマンエージェントを制御するコア部分の開発を担当しているヒューマンエージェントアーキテクトの松竹誠(まつたけまこと)さんをご紹介します。元々Flash使いとして有名人だった松竹さん。そんな松竹さんがクーガーに入った経緯から今の業務内容までお聞きしました。

── まず松竹さんの経歴を教えてください。

沖縄でのFlashとの出会い

高校生の時に初めてFlashに出会いました。それまでもウェブサイトは触っていたのですが、表現の幅が圧倒的に多いFlashを使ってみて、これは面白い!と興奮したのを覚えています。その後、沖縄の会社に入社しましたが、東京はFlash全盛期で、自分も東京にいかなければならないと思っていました。色々なサイトでかっこいいFlashを作っているエンジニアの方にSNSでメッセージを送って知り合いになったり、最新情報を集めたりしていました。

26歳、フリーランスで東京へ

Flash関係のつながりが増えだした26歳の頃、上京しました。自分がFlashのバグ等について備忘録的に書いていたブログで生まれた人脈から、フリーである程度の仕事ができると手ごたえを感じていました。

クーガー石井との出会い

東京で仕事をフリーでやっていた頃、知人の紹介で初めて石井さん(クーガーCEO)と会いました。そこから彼のゲーム開発プロジェクトにヘルプで入り、はじめて一緒に仕事をしました。

その後、AIシミュレーターの3Dキャラクターとしてレイチェルが生まれ、2017年にレイチェルをバーチャルヒューマンエージェントとして動かすLudensのプロジェクトが立ち上がり、本格的にクーガーに加わることになりました。

一番難しくて、一番面白いのは人間、それを一緒に作らないか

── 松竹さんはゲームの世界からAIに行きましたが、ゲームからAIへの転身者は少ないですよね?

確かにそうですね。ゲーム業界の方は面白いことへの興味は強いですが、あくまでもゲーム作りが目的の場合が多いので、そこから飛び出すケースは稀なようです。

僕の場合、元々、インタラクション系が好きなんですね。バーチャルヒューマンエージェントではそこにあまり関わっていませんが、気持ちいいユーザーインターフェースを作るのが好きです。以前のプロジェクトでも、人の言いなりにはならないキャラクターや反応を作っていたことがあります。

例えば嫌なことを言われたら、一瞬嫌な顔をするけれど、すぐにアイドルの笑顔に戻るような。更にどんどん嫌なことを言われ続けたら、不機嫌になっていく反応を作るのは面白かったです。そのプロジェクトではイベントのほんの短時間だけそれらしく動いていれば良かったのです。

一方、今開発しているバーチャルヒューマンエージェントは、連続的に反応し続ける人間のような感情処理が必要とされています。石井さんから誘われた時「一番難しくて一番面白いのは人間。それを一緒に作らないか」と言われたんです。確かにそれは面白そうだと思いました。

UIの本質はマイクロインタラクションに通ずる

バーチャルヒューマンエージェントを作るのは、膨大なデータ解析と計算量が必要ですが、基本的なインターフェースは、動きの中でユーザーに的確なフィードバックを伝えるマイクロインタラクションに通じると思います。

初音ミクをバーチャルヒューマンとして動かしたプロジェクトでは、AR空間に初音ミクを出現させ、そのミクと会話ができる世界を実現しました。さらにそのミクはAR空間内の様々な物体な人などの画像認識をリアルタイムで行なっており、現実世界に反応して動く、世界初のバーチャルヒューマンを生み出したと思っています。

(2018年開発 ARアプリ「ミク☆さんぽ」でのスマートグラスでのイメージ)
当時の記事:「ミク、写真を撮らせて」「やだよ」 初音ミクとスマートグラスでお話し KDDIが製品化目指しデモ公開

(機械学習+ゲームAIを具現化した例の一つとして、アプリ上でバーチャルヒューマンエージェントのレイチェルが渋谷を歩いているところ)

── 松竹さんはクーガーでどのようなお仕事をされていますか?

元々はバーチャルヒューマンエージェントの基礎部分を作っていました。今は音声認識やSTT(Speech To Text:音声から文字への変換処理)、コア側につなぐ機能拡張をしています。バーチャルヒューマンエージェントのコミュニケーションに関わる繊細な機能の拡張です。大まかな全体像をクーガー五十嵐さんが管理して、僕が詳細部を実現する、といった感じですね。

クーガーはそれぞれが得意分野を活かしながら、しかも楽しそうな仕事をしている会社だと思います。自分は新しい技術、今までになかったものを作るのが好きなので、音声認識など、新しいことを取り入れる部分をやっています。

未知の技術への挑戦

── 松竹さんからみてクーガーはどんな職場ですか?

そうですね、全体的にゆるいのですが、家族のような感じでもない。それぞれが得意分野を追求しながら、ほどよい距離感でつながっている感じです。他のメンバーがやっている業務には干渉しないのですが、興味があることには、それはなんですか?と食いついてくるような、無関心とは違う、ほどよい距離感が自分には心地いいですね。

── 社員になったきっかけは?

フリーランスでクーガーと契約してしばらく経ってから社員のオファーを受けました。フリーだと契約が終わったら終了してしまいますが、自分はまだここからもっと多くのことを吸収できるし、見てみたいと思いました。自分は新しいこと、未知の技術に興味がありますが、時間は限られていて、全方向を独学でマスターするのは不可能ですよね。

でもクーガーなら、他の才能あるスペシャリストが集まっていて、それぞれのプロジェクトの経過や結果を共有することができます。バーチャルヒューマンエージェントのこれからの進化はもちろん、もっとここでわくわくすること、面白いプロジェクトがどうなっていくのかを見たいと思いました。

── どんな時にやりがいを感じますか?

新しいことに挑戦している時ですね。例えばレイチェルの初期部分である感情のプロトタイプを作っていて、思った通りに動いた時にはやった!と思いました。新規性があるもの、試行錯誤の上で狙ったことができた時、また誰かがそれを試していて、面白いと感じているなとわかった時は嬉しいですね。

── 最大の功績をひとつ挙げるとすれば?

STT(Speech To Text:音声から文字への変換処理)プラグインとの死闘ですね。会話をテキスト化する処理が飛躍的に安定し、速くなりました。反応が速くて人間っぽいスピードになってきたと実感しています。まさに人間の神経を作っている感覚です。

レイチェルの開発初期では何もないところから作り上げる大変さがありましたが、ここ最近は本当に人間のように動かすことの大変さと面白さがあります。

自分のやりたいことや得意分野は何か

── クーガーへ入社を考えている方に一言

下記の3つが大事だと思います。

  • 自分のやりたいことや得意分野がある。
  • クーガーだからこそ、それができる。
  • 自分で立ち上げてでも、やる気があるか。

一般に知的好奇心の強い方は沢山いると思いますが、自分のやりたいこととマッチしない場合、諦めることも多いと思います。自分のやりたいことが明確にあって、それをうまく説明でき、周りを巻き込みながら動かしていける。この力があるのなら、クーガーは入社時期に関係なくチャレンジを支援してくれる会社なので向いていると思います。

一方で熱中しながらも、仕事としてコントロールできる客観性も同時に必要だと思います。流行ってるからバーチャルヒューマンエージェントに関わりたい、というよりは、ストイックに好きで信念のある人が向いているのではないかと思います。

── 最後に松竹さんはお休みの日は何をされてますか?

ゲームですね。最近はモンハンやハクスラ系をしています。ディアブロとか。プログラミングチックなゲームもやります。ヒューマン・リソース・マシーンは人に命令して入力されてきたものを出力にして出す、まさにプログラムなんで、やっていて仕事と何ら変わりないことに気づいたりします 笑。ゲーム歴は長いですが、エースコンバットが歴代一位に面白かったです。もちろん実際のシュミレーターほど複雑ではないんですが、映像が素晴らしく綺麗で、リアルなパイロットが経験するような地面と空の境界線がわからなくなる境地も体験できるようです。次点はSatisfactoryは工場を作るゲームでこれも面白いです。

おうち大好きの松竹さんは、旅行好きの奥様に連れられてヨーロッパに行くことが多いそうですが、そこでも興味があるのはゴシック建築とのこと。インタラクションにこだわる松竹さんらしく、建築物から得られるアイデアやイメージを楽しんでいます。

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